あまりに崇い精神に触れた時、人は泣く。

威神V ソウルファンミーティングに行ってきた話。

 

今年5月、ちょうどTake offリリース頃にテンさんの存在を知り、威神Vというチームを認識し活動を見るようになって早半年、そもそもkpop自体も今年に入ってから扉を開いていただいたばかりでkpopもさほどしっかり通らないままに、韓国の事務所所属の中国を拠点に活動する韓国在住の中国籍、タイ籍、香港籍、マカオ籍、台湾籍のアイドルにハマるという情報量の多い状況に当初は我がことながら戸惑うばかりで、中国アイドルを追う上で必要なアプリや中韓関係情報、中国での音楽活動、そして今までの人生で「アイドル」というものに一度もハマることなく過ごしてきた私にとっての一番の懊悩である「アイドルとは」という問題にも勝手にぶち当たりまくりながらも彼らの道行きから目が離せなかったこの半年。

彼らが思うように活動できなかった状況も、外国人がWe ChatpayやAlipayを封じられていた当時、ファンミ等に行くとしてもチケットの支払いができない問題で海外ファンが詰んでいたこともまだ半年も経ってないのに今となっては早くも懐かしいですし、そんな時代もあったねと歌える今を存分に謳歌したい。


ということでよもや中国より先に韓国に行くことになるとは思っていなかったのですがチケットが取れたので行ってまいりました。WayV Fanmeeting tour Section#1 WE ARE YOUR VISION -in SEOUL-

このファンミーティングツアー、何が素晴らしいかというとグロパ(SMグローバルパッケージ)が出るおかげで外国人もかなり行きやすくなったことなのですが、今回はyes24での自力でのチケッティングと言う名のe-Sportsをくぐり抜けてチケットを取りました。このあたりの事務的なことは省きますがチケッティングはe-Sportsでした(e-Sportsなので)

 

会場は最寄り駅からすぐ。世宗大学内のホールなので周りは大学校舎らしき建物が見えます。

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普段は講演会などに使われてるんだろうなという、横に広い作りのあたたかみあるホールで座席もとっても観やすい。

現地引き換えとのことでやや不安だったチケットも無事引き取れ一安心。ちなみにこの時パスポート必須なのでお気をつけ下さい。

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会場前の物販ではアルバムを買うとサイン入りポラロイドが当たるスクラッチが付いてくるとのことで今日来た記念にと1枚だけ買い求めたらその1枚で当たりを出すという謎の引きを発揮するなどしていました。

というかこれはかなりの枚数のポラロイドを出してくださっていたのでは。サイン入れるのも大変だろうに、ありがとうございます。家宝にさせていただきます。

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ウィンウィンのポラロイドが入っていた封筒。かわいい。

 

物販でのお買い物も終われば特に外に居る用事も無かったので早めに席に着いてゆっくりしていましたが、この時点でまだ「肉眼で威神Vを見る」という実感が湧いておらず超平常心でのんびりしておりました。

徐々に人が集まりペンライトの動作チェックなどをしていてもまだまだ私のテンションも会場の雰囲気も落ち着いたものでしたが、照明が落ちた瞬間にそれまでの穏やかな空気が引き裂かれるように鳴り響く凄まじい歓声に一気に「あぁ、威神Vを生で観るんだ…!」という感覚のスイッチを押してもらいました。あれはまさに撼天動地。2000人の声量じゃない。

美しいオープニングVCRが流れる会場はどのメンバーがアップになっても轟音の歓声が渦のように鳴り響き、一気に上がった熱気そのままに暗転した舞台の袖から小走りに現れる7人への更なる歓声。そして、Take off。

ここはもうありきたりな表現しかできなくて己の陳腐な表現力を呪うしかないのですが、威神V、実在しましたね。

パフォーマンスについてもしっかり書きたいのですがここで書くと凄まじい長さになりますのでそちらはまた別で書きますね。今日は感情のお話です。

 

Take offのパフォーマンスが終わり、司会の方が繋いでくださったのち再び現れた威神さんたち。

パフォーマンス終わりの汗もそのままに、こちらに笑顔を向けてくださる威神さんたち。

なんという眩しさ。これがアイドル…!

そんな圧倒的アイドル後光に2階席だというのに気圧されてしまいましたが、ゲームコーナーに移る前に1人ずつ自己紹介とコメントを述べる場面で彼らの話す言葉、声、仕草、表情、それらを直接キャッチできるというのは媒体を通して観る体験とは情報量が桁違いで、それぞれに画面から受け取っていたものとはまた違った印象でした。

まだ韓国語に自信が無く何度も確かめながらもニコニコ楽しそうに話すシャオちゃん。

すごく落ち着いていて聡明な方だなという印象の中にスパイスのようにやはり若干の不思議を忍ばせているヘンドリー。

「アンニョンハセヨ、WayVマンネ(強調)ヤンヤンイムニダ!」のヤンヤンちゃん、この一言にきみの愛らしさも賢さも全てが詰まってる。

柔らかく穏やかな声で話すルーカス、とても誠実に言葉を選ぶ人。

ぐっと一段階深いところでしっかりとご自分を持ってらっしゃるんだろうなという強さを感じるウィンウィン。

常に私たちファンに向けてあたたかなまなざしと言葉を投げかけてくださるテンさん。

一等優しいお声で話すクン哥、心からの言葉をありのままにそう伝えられる人。

最初の短いコメントだけでもこれだけの情報を(あくまで私が感じたものに過ぎませんが)得たのでやはり媒体や第三者が切り取ったものを通さずに経験するということはとても意義があるな…と感慨に耽っている間にトーク&ゲームコーナーに。

それぞれのコーナーもとっても楽しく、私は韓国語も中国語もよく解さないのでお話されてる内容の半分も理解できてないと思いますがそれでも心から楽しめたので威神Vはすごい。天才。

そして最初のコメントからそうでしたが、エピソードトークでも最後のコメントでも「みなさんに本当にお会いしたかったんです」と言葉を伝えてくれる威神さんたち。

彼らが威神Vとして韓国で活動できることはこれまで決して当たり前のことではなかったし、これから先もいつどうなるかわからない。

けれど、この雷鳴のような歓声が表すように韓国に彼らを待つファンがたくさん居ること、既に韓国活動経験のあるメンバーは殊更に思うところがあるのかもしれません。

「会いたかったです」と文字にするとファンサービス的な定型文として捉えがちですが、私があのとき聞いたその言葉は彼らの心からの喜びに溢れていて、ファンと対面できること、パフォーマンスできることへの歓喜が溢れんばかりの声と表情でした。

 

ファンミーティングツアーと称してやっと公演ができるようになったとはいえ、この日の会場は大学のクラシカルな講演ホールで、照明は美しかったけれど派手な装置も追り上がりもなく、パフォーマンスの時は舞台袖から走ってきて位置に着くようなシンプルさで、なんだか私が勝手に微笑ましいような切ないような気持ちになってしまっていたのですが、彼らにとってそんなことは重要ではないと、たとえどんな場所でもファンと対面してパフォーマンスを観せられることが嬉しいのだと全身で表現する彼らのその精神の崇さに触れてしまったのでした。

会場では彼らをめいっぱい吸収するのに忙しく感動で泣くようなこともなかったのですが、心の湖面が静かに波立つように、一体何に心動かされてしまったんだろうと自分でも把握できないままただ泣きたいような嬉しいような気持ちを抱えて会場を後にし、ぼんやり考えごとをするともしないともなくホテルまでゆっくりと帰り着いたところでボロボロ泣いてしまった。

これが一体何の感情の何の涙なのかわからないままただ涙が溢れてくることに戸惑いながら、数日経ち落ち着いた頭で情緒の動きを反芻してみたところ、あぁ、あれは「あまりにも崇い精神に触れた時、人は泣く」現象だと腑に落ちました。

誤解の無いように書いておかなくてはいけないのは、私は他人に対して「性格が良い」ほうが良いとは全く思っていなくて、そもそも性格が良いって何を基準にしてそう判断されるのか、「他者から見た性格=その人の言葉や行動」で判断されると思うのですがそれってものすごく主観的なことで、判断する人の感覚や習慣によって全く異なる評価がなされるからです。

優しい人は気弱な人と言い換えられるようにすべては表裏一体の中で自分が他人に対して何を求めているかが「性格が良い」と判断するものに現れる、つまりとても不安定な定義であると考えています。もちろんこれは倫理的、法的な意識とは別です。

アイドルたちに対してもよく用いられる「性格が良い」という評価ですが、これに関してもアイドルだからこそ私はむしろそうじゃないほうが安心していられるんじゃないかと、胸を刺すような痛い報せを受けて勝手に思ってしまうほど、どうか周りに優しくなく自己中心的に生きていて欲しいと身勝手に願ってしまう。

威神Vに関しても個々人のその「性格」まではもちろん全くわからないし、知りたいと詮索することも無い、ただ彼らが私たちに向けて見せてくれるものが全てであり、私たちがそんな彼らに見るものが全てだと思います。

そんな考えを持ちながらまなざしているにも関わらず、ステージに対して、ファンに対して、そして何より自分自身に誠実に向き合い続けるひとの姿を目の当たりにしてしまい、そのあまりの崇い行いに心が引っ張られてしまったんですね。

これまで思うように活動できなかったジレンマも、全員が母国を離れての生活の大変さも、もっともっと大きいステージで演りたいだろう欲も、それが彼らの中にあるかどうかわからないけれど、そんなものに腐ることなくフラットに今を眼差せることがどれほど難しいことか。

高みを目指せば目指すほど、今を慈しむことは難しい。

「もっとやれるのに」「もっと評価されるはず」という感情が渦巻くほうが自然だし、もし私なら絶対そうなってる。もちろんそういう部分もあるだろうけど、その葛藤と同時に今自分たちが持てるものを慈しみ愛することを並行して行うことがこの人たちはできるんだな、と。私が勝手に受け取っただけですがそれがどれほど尊いことかと、その感情が涙になってボロボロと溢れたのだと思います。

何をもって「成功した」と定義されるのか、これもまた難しいことだと思います。一見成功しているように見えても本人が幸せではないということなんて山ほどあるし、それを成功と呼ぶべきではないと私は思ってしまいますが、それでも彼らが大切にしている「今」をこれからも守り続けるためには商業的な成功無くしてそれを維持することはできません。未来は連続した「今」の延長線上にあるものだから。

これからの彼らの道行きが商業的にも精神的にも豊かで幸せなものでありますようにと願うと共に、きっとどれだけ願ってもこれから先困難や苦難が降りかかることもあるだろうと思います。全くもってどこから目線ですが、彼らより少し長く生きている者として、それらの苦難が全て彼らの枷ではなく糧になりますように。そうしていける力を持っているだろうと信じさせてくれる7人を見つけることができて本当に幸せな2019年でした。

 

そして何より健康に、安全な環境で心置きなく彼らが彼らの仕事を全うできますように。